デボラの部屋

マディー
音が聞こえるのはこの場所みたいね！

マディー
この部屋、大分散らかってるわね！

マディー
さてと、どこから手を付けようかしら…

マディー
待って…

マディー
もしかして、あそこに人が座っているの？暗くてよく見えないわ…

マディー
デボラさん！？

マディー
どうやら、呼吸はしているみたいね！

デボラ
「息を深く吸い込んで、4秒間ストップ。…そして、ゆっくり吐き出す。」

マディー
デボラさん？大丈夫ですか？

デボラ
あら、マディーじゃない！私はもちろん、元気ハツラツよ！

デボラ
今、呼吸エクササイズをしていたところなの。

マディー
そ、そうなんですね。でも、なんでこんなところにいるんですか？

マディー
これは何…！？

デボラ
あら！それは私が若い頃に作っていたジュエリーじゃない！とっくの昔に無くしたと思ってたわ。

デボラ
まだ未完成のままだったのよね…そうだわ！マディー、私と一緒に完成させてみない？

マディー
私、ジュエリーの作り方なんてわからないですよ！

デボラ
心配しないで、私がコツを教えてあげるわ！

デボラ
やるじゃない！あなた才能あるわよ！

マディー
正直、自分でもびっくりです。

デボラ
やってみると楽しいでしょ？私にとってジュエリー作りは、日々の発見を形にして表現する方法だったのよ。

デボラ
これは…とても特別なジュエリーなの。

デボラ
リンジーのことを思って作ったのよ。

マディー
そうなんですね！でも、どうしてリンジーのことを？

デボラ
そんなの決まってるじゃない！彼女が強くてたくましい女性だからよ。

デボラ
私たちも負けてないけどね！

マディー
この部屋、見るからに「パリジャンヌ」って感じがするわ。

マディー
きっとヨーロッパを旅した時に感動して、大きな影響を受けたのね。

マディー
それにしても、パリを丸ごと持って帰ってきちゃうなんて…デボラさんらしいわ！

マディー
この手紙の宛名、「私のかわいいお花ちゃん」ってなってるけど…誰のことかしら？

マディー
こんなことを書くのは、デボラさん以外に考えられないわ！

マディー
相手の未来について夢や希望が書き連ねてあるわ…この「お花ちゃん」って、一体誰なの？

マディー
デボラさんは、このデスクでどれだけの時間を過ごしたのかしら。

マディー
ごめんなさい、なんか孤独だったみたいな言い方をしちゃった…

マディー
…って、独り言で謝ってもしょうがないじゃない！

マディー
このエッフェル塔、置物だけどクオリティは一級品ね！

マディー
そういえば、危うくこれがガラクタとして、詐欺師に売り飛ばされそうになったんだけど…

マディー
っこの屋敷って、こんないわくつきの品ばかりよね！

デボラ
実はこの前、セラピストさんに”過去と向き合える場所”でエクササイズをする必要があるって、はっきり言われちゃってね…

デボラ
それなら昔の自分の部屋しかないって思ったのよ。

マディー
ここ、デボラさんの部屋だったんですか！？

デボラ
ご名答よ。私が住んでた頃とはずいぶん見た目が変わっているけどね！

デボラ
でも、それもそのはず。長い間この場所を避けてきたのは、他ならぬこの私なんだもの。

デボラ
セラピストさんによると、私は「見捨てられた不安」ってやつを抱えているらしいわ。

デボラ
養子に出された時のことが原因でね。

マディー
これは、デボラさんが最初の結婚式で履いていた靴だわ！

マディー
イタリア製の超高級品ね。しかもオーダーメイドだし。

マディー
どこかに売って、邸宅の改修費に使ったら怒られるかしら？

マディー
デボラさんのトレードマークの帽子だわ！

マディー
本当にオシャレね…試しに被ってみようかしら。

マディー
少しの間借りても大丈夫…よね？

マディー
私、もしかしたらその気持ち、分かるかもしれないです…

デボラ
ええ、あなたにも悲しい過去があるものね。

デボラ
ボールトン家の女性はいつだって誰かに見捨てられてきたのよ。

マディー
そんな言い方しないでください！一緒にこの場所を片付ければ、しっかり過去と向き合うことができるはずですよ！

デボラ
確かに、1人で片付けるのは少し骨が折れるかもしれないわね…

マディー
そうですよ！私1人で自分の部屋を片付けた時なんて、ほんとに大変だったんですから！

マディー
やっぱりデボラさんって、昔からオシャレだったのね！

マディー
今も昔も抜群のファッションセンスだわ。

マディー
同じボールトン家の人間として、私も見習わなきゃね…

マディー
これはデボラさんの馬ね！

マディー
額縁に「ビスケット」って名前が書いてあるわ。

マディー
おいしそうにエサを食べている姿がかわいい！きっと大好物だったのね！

マディー
デボラさんって、騎手としても一流だったのね！

マディー
これだけの数のリボンをもらってるんだから、間違いないわ！

マディー
私とバビロンにも何かアドバイスをもらえないかしら？

デボラ
ハァ…こうしていると、どんどんあの頃の記憶が蘇ってくるわ。

デボラ
ほとんど怒りの感情だけどね。こんなの自分でも驚きよ。

マディー
どういうことですか？

デボラ
私がどうやって養子に出されたかは、まだ話していなかったわよね。

デボラ
玄関先に置き去りにされたのよ…まるで路上にいらなくなったペットを捨てるみたいにね！

マディー
デボラさん…

デボラ
ごめんなさい、あなたに対して怒ってるわけじゃなの。

デボラ
誰も理由を説明してくれなかったことに腹が立っているだけよ。

マディー
これは…オウムの鳥カゴかしら？

マディー
でもデボラさんって、ペットを飼うようなイメージはないわ…

マディー
オウムって100歳まで生きることもあるのよね！まだその辺にいるかもしれないわ。

マディー
私たちの家族に理由を知っている人はいなかったんですか？

デボラ
…

マディー
言いたくなければ大丈夫ですよ。

デボラ
ハァ…お父さんとお母さんには感謝してるのよ。私のことを実の子のように愛してくれたからね。

デボラ
実は、私が養子だってことは9歳になるまで知らなかったの。偶然判明したんだけど、今思えばある意味幸運だったのかもしれないわ。

マディー
一体どうやって分かったんですか？

デボラ
レオナルドよ。

マディー
ええっ！？

デボラ
あいつがお父さんのオフィスで養子縁組届を見つけてね。

デボラ
親切にも、わざわざ私の誕生日に教えてくれたのよ。

マディー
なんてひどいことを…！

デボラ
最高の誕生日プレゼントでしょ？

マディー
最高の寝心地だわ！

マディー
これは高級品に違いないわね！まるで、おとぎ話から飛び出してきたみたい。

マディー
まさにプリンセスにふさわしいベッドね！

マディー
きっと、すごく傷ついたはずですよね…

デボラ
そうね。でも、一番悲しかったのはお父さんとお母さんが私に黙っていたことだったの。

デボラ
しかも、私はそれ以上詮索しないように必至に説得までしてきたわ。

デボラ
あなたも、自分の家族について知りたいと思う気持ちは人一倍分かるでしょう？

マディー
はい…当然のことだと思います。

デボラ
前にウルスラから、そこまで知りたがるのは私の反抗的な性格のせいだなんて言われたことがあったわ。

デボラ
でも、これはボールトン家の伝統なのかもしれないわね。皮肉なものだわ…

デボラ
それから、学校でもよくからかわれるよになったわ。

デボラ
「捨てられデボラ」なんてあだ名をつけられたりしたの。

マディー
なんて残酷な…

デボラ
子供はいつだって残酷なものよ。でも幸いにも、レオナルドが私のことをかばってくれたの。

マディー
あのレオナルドさんが？

デボラ
腐ってもレオナルドは私の兄だからね。彼のやり方で私のことを守ってくれたわ。

マディー
レオナルドさんにそんな一面があったなんて…

デボラ
もしかしたら、あなたは彼のことを少し誤解しているのかもね。まあ、金に汚いのは紛れもない事実だけど…

デボラ
それでも生粋の悪人ってわけじゃないのよ。

マディー
このバスタブ…古いデザインだけど、とってもゴージャスね！

マディー
当時はここで、窓辺から射す陽の光を浴びながら、泡風呂を楽しんだりしてたんじゃないかしら！

マディー
デボラさんの人生が羨ましくなってきたわ！